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欲望
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「あっ」
思わず声をあげていた。
その自分の声を聞いた瞬間、奏子は身体を羞恥に染め上げる。
くすっ
初音の偲び笑う声が耳に届く。
恥ずかしさに余計に身体が熱くなる。
でも…
止められなかった。
愛しい人に見られながら、淫らに感じる自分
自らの手で、自らを貶める行為。
そのすべてが、奏子の身体を熱くする。
「んっ、あっ」
がまんしようと思えば、思うほど身体は熱くなり。
自然と淫らな喘ぎ声をこぼしてしまう。
(姉様…)
心の中で何度も呼ぶ。
(わたしを愛して)
(わたしを滅茶苦茶にして)
(わたしを…姉様のものに…)
叶わない想いが、うたかたのように沸き起こっては消えていく。
自然に零れる涙に頬を濡らしながら、そっと愛しい人を見つめる。
初音の冷めた瞳が、自分をずっと見下ろしている。
カタンっ
ゆっくりと立ち上がった初音が、ゆっくりと奏子に近寄ってくる。
「奏子…」
静かな、低い、その声…
しかし、何故かほっとする。
がまんしなくていいんだ。
奏子は、とっさに理解した。
自然と奏子の下腹部で蠢く指が早くなる。
「あっ…んっ、姉…様…あうっ」
「もっと聞かせて…」
「あっ、はぁ、はぁ、あぁ」
「聞かせて…奏子の…その綺麗な声を」
白く冷たい指が、頬に触れる。
熱く火照った奏子の身体を覚ますほど冷たいその指。
しかし、逆に冷めるどころか、その触れた部分がやけどするほど熱く感じた。
「姉…様…うくっ、んんっ…」
「もっとよ…」
赤い瞳が、欲情に濡れていた。
(姉様も感じている…)
一緒に感じてくれている。
それだけで、奏子は幸せだった。
「姉様…」
(もっと…)
感じたい。
そう思うのに、何故かいけなかった。
何故…
その理由は、わかっていた。
大切なたったひとつが足りないのだ。
「姉様…」
もう一度呼ぶ。
にやっ
姉様の顔が、淫らな笑みを浮かべる。
わかっているのだ。
奏子が、何を望んでいるのか。
何を欲しているのか。
わかっていて、与えようとしない。
奏子が焦れて、自ら欲するのを待っているのだ。
「どうしたの?」
「姉様…、いじめないで…」
「いじめてなど、いないわよ」
「でも…」
「はっきりお言いなさい」
「……」
「何が欲しいの?」
「姉様が…」
「……」
「姉様が…、欲しい…」
視界が涙に歪む。
赤く冷たい唇が、奏子の唇に重なる。
「んっ、んんっ」
奏子の唇を割り、奏子の上の唇を犯す。
でも、奏子が求めているのは違う。
くちづけてもらえるのはうれしい。
けど、もっと、もっと姉様が欲しい。
好きになるほどに貪欲になっていく。
とても淫らなことを求める淫乱な身体になってしまった。
そう思うと、奏子の心は少し哀しくなる。
しかし、姉様が求めてくれるのなら。
「姉様…、くだ…さい…」
唇が離れた瞬間、泣くような声で囁く。
「あげたでしょ」
初音のあげたが、くちづけのことを言っているのはわかっていた。
でも、奏子の欲するものは、初音自身。
それがわかっているはずなのに、はっきり言わないと与えるつもりはないらしい。
見ているだけでいじめたくなる、そんな奏子自身にも問題があることなど、彼女にはわかるはずもない。
初音もそれほどに奏子を気に入っていた。
「姉様…」
「……」
「抱いて…、んっ。抱いてください…」
「奏子…」
それが、精一杯のおねだりだった。
でも、初音は動く気配を見せない。
「姉様…」
奏子は、苦しげに初音を呼ぶ。
トンっ
いきなり初音に押され、奏子の身体が後ろへ傾ぐ。
突然のことで、奏子は頭を打たないように受身を取るのがやっとだった。
しかし、倒れても強い衝撃はあまりなく、奏子の身体を初音の糸が優しく受け止める。
優しい糸の肌触り。
まるで初音に抱きとめられたような幸福を感じた。
「姉様…」
名前を呼ばれ、奏子は初音の顔を、下から上目づかいに見上げる。
「奏子…、覚悟はいい?」
こくんっ
初音の言う意味を理解して、奏子はそっと身体の力を抜いた。
やっと、抱いてもらえる。
求めていたものを得られる。
無意識のうちに、手を初音のほうに伸ばしていた。
求めるのは、初音。
初音だけ…
自然に涙が、零れていた。
ちゅっ
まるで、涙の雫を受け止めるように、初音の口付けが奏子の頬に落ちる。
「姉様…、好き…」
頬を真っ赤に染め、まるで初めて男を迎える少女のように、奏子は初音を待つ。
「奏子は、いつも可愛いわね」
「えっ」
「何度も交わっているのに、まるで初めてのように」
びくっ
初音の『初めて』という言葉に反応するように、奏子の身体が微かに揺れる。
あの、初音と初めて会った夜の、男たちの輪姦を思い出し、奏子の心はほんの少し翳る。
「バカね、褒めているのよ」
「はい」
「淫乱な女を抱くより、奏子のように純情な乙女を抱くほうが、わたしもうれしいのよ」
「そんな…」
何度も男に汚された自分を、純情な乙女という初音。
けど、その初音の言葉に偽りはない。
「もっと、かわいらしくしてあげるわ」
「姉様…」
そういうと、初音は蟲の器官を奏子の秘芯に潜り込ませる。
「姉様っ」
苦しげに喘ぐと、奏子は初音の身体をぎゅっと抱きしめる。
「いいわ、奏子」
奏子の身体を侵食しながら、初音の一部が彼女の身体と交わる。
初音の身体と繋がる、その一体感が奏子の身体をよりいっそう燃え上がらせる。
「姉様、姉様っ」
「わかっているわ」
奏子を狂わす液体が、初音の先端が滲み出してるのかもしれない。
頭が真っ白になりそうなほどの快楽が、奏子の身体を、精神を狂わせる。
初音にしがみついていなければ、まるで奈落の底に落ちていきそうな感覚に囚われる。
「姉様っ」
「奏子、気持ちいい?」
「気持ち…いいです、姉様…あっ」
初音の赤い瞳が、まるで酔っているように潤んで、そして、淫乱に喘ぐ奏子の顔を映していた。
「姉様、わたし…」
「いきそう?」
「はい…、姉様…あんっ、い…、いかせてっ」
「いいわよ」
そういうと、奏子を追い詰めるように、激しく奏子の身体を揺する。
「姉様っ」
ぎゅっ
(え?)
それは、以外な反応だった。
初音の名を呼んだ瞬間、彼女の腕が奏子の身体を強く抱きしめたのだ。
まるで、奏子の心の声が届いたように。
(前からぎゅっと抱きしめて欲しい…)
初音に抱かれながら、そう思っていた願いが、まるで届いたように彼女の腕が奏子を抱いた。
「姉様、好き、好きっ」
「奏子、いきなさい」
「姉様っ…、あぁぁぁぁぁぁ」
激しい絶頂の波に押し上げられるように、奏子の意識は白濁した無の世界に囚われた。
「奏子…」
初音は気だるい身体を、奏子の身体に寄り添うように横たえた。
そして、奏子の顔をそっと見る。
さっきまでの、欲情に彩られた表情は消え、安らかな幸福に包まれていた。
(どうして?)
化け物の自分に抱かれて、何故こんな幸福な顔が出来るのだろうか?
それほどまでに、奏子は自分を慕っている。
化け物の自分を…。
奏子を見ていると、遠い昔に置いて来た自分の心を見せられているようで
ほんの戯れ交わりだというのに、つい彼女の望む通りに動いてしまっていた。
あの時…
確かに感じていた。
抱きしめて欲しいと、温もりを求める子供のような奏子のせつない想いを。
しかし、初音は奏子の身体が立ち上る精を喰らうために抱いている。
初音にとっては、捕食の時間。
なのに、奏子に取っては愛の交歓。
無視すればいい。
そんな取るに足らぬ人間の願いなど、初音にとっては無視すればいいことだった。
だが、初音は思わず抱きしめていた。
奏子の望むままに、ぎゅっと抱きしめていた。
あの時の、奏子の驚いた表情が、それが正解だということを物語っていた。
初音は、奏子に自分でも認められない感情を、抱き始めていることはわかっていた。
それでも今は…
欲望のままに抱き、奏子を貪る。
それしか、ないのだ…
言い聞かせるように、初音は目を閉じた。
― fin ―
<2023/08/13 17:07 紫苑 芳>
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